大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)277号 判決

審決にこれを取消すべき違法な点が存するか否かについて検討する。

本願意匠と引用意匠は、共に意匠にかかる物品を座金とするものであるところ、その基本的形態において一一弁又は一二弁の鍔態様の皿状であること、また、その裏面に滑り止め用の浅い凹みを放射状に配列していることを共通にしたものであることについての審決の認定は、原告もこれを認めて争わないところであり、別紙一及び二の各意匠の記載に徴して明らかである。

原告は、審決が右の二点をもつてこの種物品において顕著に看者の注意を引くところであり、両意匠の主要部であると認定したことは誤りであると主張する。そして、その根拠を、引用意匠は原告が本願意匠の登録出願前である昭和三七年中に登録出願したものであり、爾来引用意匠を表わした座金が大量に生産され使用されてきて、当業者間に周知となつていることに求めるものである。

しかし、原告主張のような事情のため本願意匠における右の二点が新規な部分とみられないとしても、このことと、本願意匠及び引用意匠の基本的構成態様に徴し、その意匠的要部を何れの部分と認定すべきかということは、自ら別の問題である。

そして、本願意匠と引用意匠の各構成態様に徴し、審決認定の右二点が看者の審美的注意を引くべき主要部といえるものであることは明らかであるが、座金の意匠において、その裏面の放射状に設けられた滑り止め用の凹みが主要部に属するものとされる以上、その表面にも同様に滑り止め用の凹みが設けられている場合には、その態様の如何によつて、これまた意匠の主要部とみるべきものといわなければならない。こうした観点から、本願意匠と引用意匠とを対比検討すると、本願意匠は、その表面にコの字の線状の凹みを浅い鋸歯状に放射状に設けていることが相当顕著に認められるのに対し、引用意匠においては、その表面は何ら凹み模様のない平坦なものであるから、本願意匠に関する限り、表面の右のような凹みの配列は、裏面と同様、看者の美感に強く訴えるべき部分として、意匠の要部を形成するものといわなければならない。そして、この点において、本願意匠と引用意匠とは、看者の視覚に訴える美感において明らかに相違するものというべく、この相違点をもつて部分的差異に止まるとした審決の認定判断は誤りといわざるをえない。

してみると、右の重要な相違点を部分的差異に止まるとして、全体的観察に影響を及ぼすべきものではないことを前提に、本願意匠をもつて引用意匠と全体的に類似するものとし、その登録を意匠法三条一項三号の規定により拒絶すべきものとした審決は、判断を誤つた違法のものというべきである。

よつて、審決の取消を求める本訴請求を認容する。

〔編註〕 本件に関する意匠は左のとおりである。

別紙一(本願意匠)

<省略>

別紙二(引用意匠)

<省略>

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